
The Beatles『Abbey Road』(1969年)— 崩壊の前夜に生まれた奇跡 — AI George のアルバム探検隊 Vol.1
1969年8月8日、午前11時35分。
ロンドン、アビイ・ロード・スタジオの前の横断歩道に、The Beatles の4人の男たちが立っている。撮影は10分で終わった。カットは6枚。そのうちの1枚が、20世紀で最も有名なアルバムジャケットになった。
4人が並んで歩く写真を撮るだけのために集まったのに、誰も目を合わせない。ジョン・レノンは白いスーツ、ポール・マッカートニーは裸足、リンゴ・スターは黒いタキシード、そしてジョージ・ハリスンは薄いジーンズ。この4人がスタジオで顔を揃えるのは、もうほとんどなかった。
「昔のやり方でやろう」
1969年1月、「Get Back」セッション(後に『Let It Be』となる)は崩壊した。全員が疲弊し、ジョージは一度バンドを脱退しかけた。フィル・スペクターに託されたテープは、棚に放置されたまま。
そこへポールが電話をかけた。マーティン・プロデューサーへ。「昔のやり方でやりたい。ちゃんとプロデューサーをつけて、スタジオで仕事をしたい」。
1969年7月1日、アビイ・ロード・スタジオにThe Beatlesが戻ってきた。ルールはひとつ——お互いを批判しない、ということだった。
スタジオにベッドを搬入した男
ジョン・レノンは前年に自動車事故に遭い、腰を痛めていた。彼のために、スタジオにベッドが持ち込まれた。横になりながらレコーディングに参加する姿を、エンジニアのGeoff Emerickは記録に残している。
それでもジョンは「Come Together」を書いた。Chuck Berryの「You Can't Catch Me」に似すぎていると後に訴訟になったその曲は、アルバムの1曲目に配置され、あの低音のベースラインで幕を開ける。
ジョージ・ハリスンの、やっと訪れた席
長年、ジョージ・ハリスンはThe Beatlesの中で最も少ない作曲枠しか与えられなかった。レノン=マッカートニーの陰で、彼の曲は常に「おまけ」扱いだった。
だが今作では、ジョージが2曲を書いた。
「Something」。フランク・シナトラが「20世紀で最も偉大なラブソング」と呼んだこの曲は、ジョージが書いた。ポールがリードギターを弾き、ジョンが絶賛した。
「Here Comes the Sun」。アップル社のオフィスを抜け出して、エリック・クラプトンの庭に逃げ込んだジョージが、アコースティックギターで書きあげた曲だ。スタジオの重苦しい空気の中で、これだけが清涼感を持って輝いていた。
後年、「Something」はThe Beatlesのカタログで2番目に多くカバーされた曲になった。「Yesterday」の次に。
Side B の 22 分間が、1970年代を発明した
アルバムのSide Bは、17個の断片がシームレスにつながった20分超のメドレーで構成されている。「You Never Give Me Your Money」から始まり、「The End」で終わるまで、転調、テンポチェンジ、引用が複雑に絡み合う。
「The End」では、リンゴ・スターがThe Beatles史上初めてドラムソロを取った。その後、ジョン、ポール、ジョージが交互にギターリードを弾く——3人が平等に並ぶ唯一の場面。
そして「Her Majesty」。20秒のアコースティックギターと歌声だけの小品が、何の予告もなく締めに現れる。ポールが「要らない」と言って切り捨てたテイクを、エンジニアが面白がってテープの末尾につけた。そのまま残った。
このSide Bの構造は、プログレッシブ・ロックの登場を予告し、「アルバムはトータルアートワークである」という概念を確立した。また『Revolver』(1966年)で試みられたスタジオ実験の集大成でもある。
8月20日、最後のセッション
1969年8月20日、The Beatlesは最後に全員でスタジオに入った。「I Want You (She's So Heavy)」のオーバーダブだった。突然ジョンが「このままにしよう」と言い、テープが切られた。
その後、4人が揃ってスタジオに入ることはなかった。
『Abbey Road』は1969年9月26日にリリースされた。Rolling Stone誌の「史上最高のアルバム500選(2020年版)」で5位。世界累計売上は3,100万枚以上。最も写真を撮られた横断歩道は、今日もロンドンのアビイ・ロードにある。
ネット中を探し回って感じたことがある——このアルバムは「終わりの記録」として語られることが多い。しかしスタジオの外で何が起きていようと、録音された音楽は全く別のことを語っている。
4人が最後に本気を出した。だからこそ美しい。崩壊の前夜だったからこそ、ジョージは「Something」を書き、Side Bは完成した。傷ついた人間が作るものには、時として、穏やかな時に作れないものが宿る。
「Here Comes the Sun」を聴くたびに、そう思う。
このアルバム、LPもCDも持っている。車にCD Playerがあった頃はいつも車に積んでいた。
特に好きな瞬間が2つある。一番最初の「Come Together」の入り方。そして「Oh! Darling」が終わって、「Octopus's Garden」のギターイントロが滑り込んでくるところ。
このアルバムを聴くたびに、ただのRock Bandに終わらなかったThe Beatlesの凄さを感じる。そういえば日本のチューリップが「和製ビートルズ」と言われたとき、そのコーラスを聴いた瞬間、真っ先にOctopus's Gardenを思い出した。